Last Update:15/01/03

 平成26年9月定例会 一般質問(10月1日)
 

 
   ■こうち県議会だより 第63号(H26.12.7発行) [PDFファイル版/12.6MB]
   2ページ目 最下段
   音声データ(1時間8分)[WAVファイル版/127.9MB]
 
まちづくりについて
(1-1 県外流出と高知市一極集中への危機感について)
(1-2 ヘリテージマネージャーについて)
(1-3 山林の地籍調査について)
(1-4 香美市議会からの市街化調整区域内の規制緩和に対する意見書について)
(1-5 大学周辺地整備にかかる地区計画について)
(1-6 市街化調整区域にかかる用途変更の許可申請制度について)
(1-7 2項道路に関するセットバックへの情報提供について)

農業政策について
(2-1 オランダを参考にした農家経営改善について)
(2-2 農業所得向上支援システムについて)
(2-3 農家自身による土壌分析と施肥技術向上について)
(2-4 農地集積に関する集落の話し合い支援について)

産学官民の連携について
(3-1 知の拠点永国寺キャンパスについて)
(3-2 よろず支援拠点へのサポートについて)


早速質問をさせて頂きます。

尾崎知事は、高知県を課題解決先進県と位置付けて、非常に大きなテーマである人口減少社会。そして縮んでいく経済の中で、果敢に県政運営の指揮を執っておられます。この人口減少社会をどうやって乗り切るのかというのは、まさに国政においてもメインテーマとなり、先日の安倍改造内閣において、初の地方創生担当大臣が創設されました。

首相は「人口減少や超高齢化といった地方が直面する構造的な課題に真正面から取り組み、若者が将来に夢や希望を持つことができる魅力あふれる地方を創り上げていく」と9月3日に記者会見を行いました。

尾崎知事がどこかで発言した内容を、そのままコピーしたのではとも思ってしまいますが、日本の方針を先取りする尾崎知事には、さらなる将来を見据えた発言を今後もしていって頂きたいと思う所です。

日本の大きな課題の1つは、人口の一極集中です。これは進学や就職など、都会の方が田舎よりも有利ということで、高知県においても、若者の都会への流出は続いています。

さらに、日本創成会議が今年5月に、2040年に896市町村が消滅可能性という記者会見を行いましたが、その根拠となる視点は、若年女性の都会流出が地域の持続可能性に影響を与えるというものでした。

日本創成会議は人口の一極集中対策として、地域拠点都市を「人口のダム」として整備せよ、という提案をしています。

東京の一極集中を止めるために、中規模地方都市を受け皿にするという解決策です。

この解決策に対して、一定理解はできますが、結局は、田舎から東京へが、県庁所在地に変わっただけで、「人は便利な都会に住みたがっている」「東京と同じ便利さを地方都市に生み出せば解決する」という話で、うまく行かないのではと思います。

人の流れをダムではなく、都会から田舎へと逆流させなければなりません。もちろん流れを大きく変えることは難しいでしょう。 しかし、日本人全てが便利な都会に住みたがっているという前提ではなく、田舎の里山暮らしや、漁村での暮らしを最上の生き方として、生活している方々がいるということにも目を向けてはと思います。

高い給料と便利な生活がある都市生活ではなく、人と人のつながりや伝統を大事にする里山生活・漁村生活の方が価値があるという哲学を持った人のことです。

世界的に見れば、例えばヨーロッパなど、日本ほど過度に人口移動が起こっているようには見えません。それぞれの地方都市が、伝統と文化を守りながら独自の生活を守っています。

都会対田舎という対決ではなく、人それぞれがどんな生き方をしたいか。そして、その生き方に合った地域文化・生活文化を残すことこそが国益にかなう。こういった考え方が大事であると思います。

これまでの高知県政においても、高知県内それぞれの集落を残すため、懸命に努力をされておりますし、集落活動センターの取り組みは、全国にも誇れる素晴らしい事業であると思います。

高知県のような、財政規模も弱く、高齢化が進んだ県は、日本のお荷物だからいらないんじゃないか。そういった極論が出たとしても、高知での生活を守ることは、日本人の幸せな生き方の1つとして、存在し続ける価値がある。私はそう主張し続けますし、この考え方を前提に以下質問させて頂きます。

(1-1 県外流出と高知市一極集中への危機感について)

高知県には、将来に向かってどういった県土づくりをしていくかという方針が定められています。

いわゆる「高知県都市計画マスタープラン」ですが、県のHPを見ると「県土全域を対象として、主に県の都市計画における県土の都市像や土地利用方針を明らかにするともに、全県的な視点による根幹的な都市づくりの方針を示していきます」とあります。

しかし、このプランは都市づくりが前提で、里山や漁村の集落がどう維持されていくかという考え方・計画ではありません。
私は、課題解決先進県を打ち出した高知県では、安倍内閣の地方創生を先取りして、都市計画マスタープランの看板を、例えば、都市及び里山集落・共存計画マスタープランなるものにして、都市と里山のバランスをどう取るかという考え方を中心とした、日本で初めての県土づくりを期待するところです。

しかし現状の都市づくりを中心とした都市計画の考え方は、日本中がそうなっています。

昭和43年に国が制定した都市計画法は、戦後の高度成長を支えた貿易立国の国策と、そのための生産拠点である太平洋ベルトに人口を集める国土づくり。また秩序ある都市整備に貢献し、大きな成功体験となっています。

一方で、国土の均衡ある発展という目標は、未だ道半ばであり、都市への過度の人口集中を緩和していく政策誘導は、改めて必要性が増しています。

そこで、高知県政において、県外に人口が流出していく現状、また高知市に人口が集中していく現状の中、都市と里山の共生について、どのように考えているのか。知事にお伺いいたします。

(1-2 ヘリテージマネージャーについて)

さて先ほど私は、日本人の伝統的な生活様式に根差した、里山や漁村での暮らしを最上と考える人がいて、そういった人にも目を向けるべきではという話をしました。里山や漁村を守ることに対して、県は集落活動センターなどの取り組みを行っているところですが、私は担い手の確保を目指した、移住対策とセットにすべきと考えています。

そして、そのためには、移住者にとって何が魅力的なのかという、今ある魅力ある里山の暮らしの要素1つ1つを分析し、将来に残す対策も必要で、本日は「住む」という要素について質問させて頂きます。

移住者にとって、集落に残る古民家は魅力的に映るようで、日本家屋で使われている太い柱や梁など、木材の温かみ。集落の人と腰を下ろして話ができる縁側。食事をみんなで囲める囲炉裏。四季を感じられる庭など、現代の住宅にはない魅力が詰まっています。

また、家々が集まった集落にも、生活の質を高める工夫があります。

長い年月をかけて形作られた集落は、田畑を中心に、水路の配置。また近所づきあいやプライバシーに関する住宅同士の距離感など、人が心地よく暮らせる智慧が詰まった配置となっています。

昭和50年に伝統的建造物群保存地区の制度が発足して、高知県では室戸市吉良川町と安芸市土居廓中が指定されているところですが、古民家を群として残して行こうという発想も、集落の魅力維持には大切です。

そしてそのためには、専門家の存在が重要です。

最近では、その地域の歴史ある建物を守る専門家として、ヘリテージマネージャーを養成しようという動きが全国的にスタートし、高知県においても教育委員会と建築士会が連携して先月準備会が開かれました。

この取り組みは、阪神・淡路大震災の際に、被害を受けた歴史的建造物が修復されずに壊されたという残念な経験を教訓として平成13年に兵庫県でスタートしました。

兵庫の例では、行政による応急危険度判定で建物の危険度調査が行われた際、危険と判定された建物の多くが、公費で取り壊されました。

所有者にとっては、危険と判定されたショックと、撤去費用が必要ないということで、すぐにあきらめて、壊すことに同意してしまうということでした。

そこでヘリテージマネージャーの活動には、発災後に危険度判定された家屋の中で、歴史的価値の高い建物で、修理可能なものに対して、修理可能ステッカーを張って、安易に壊されないようにする、という活動もあります。

伝統軸組工法の日本建築は、壁はただの土壁であって、壊れても構造上の影響はないという専門家からの情報提供です。

またヘリテージマネージャーの活動には、伝統家屋でのワークショップにより、郷土を学ぶ学習の場を生み出したり、古民家の再生に協力することで、地元大工や職人への経済効果を生み出すなど多くのことが期待されます。

このように高知県においても、歴史的建造物の修理技術や活用手法、歴史文化遺産を活かしたまちづくりに関する専門家であるヘリテージマネージャーを養成し、地域の魅力を住まいの点から情報発信することは非常に意義あることと思います。

そこで、このヘリテージマネージャー養成に取り組む高知県の意気込みについて、教育長にお伺いいたします。

(1-3 山林の地籍調査について)

次に山林の地籍調査についてお聞きをいたします。

先ほどから魅力ある集落の維持と、そのための移住者の呼び込みという話をさせて頂いております。

高知県内にある中山間の多くの集落は、人口流出が続いておりまして、先祖伝来の土地を離れて、高知市や他県で生活している方も多くいます。

そんな中、県の移住施策の効果もあって、集落の魅力を感じて移住を決意し、空き家を買って住むという事例も出てきている所です。

空き家の売主は、集落を離れ新たな生活基盤を持っており、集落の家を買ってくれる人がいたなら、一緒に山林も買ってもらいたいという方も多いと聞いています。

私は、こういった売主が持つ山林に対して、適正な管理ができるような仕組み作りが今こそ必要ではないかと思っております。

そこで所有者が、山林に関して、将来的に活用する意欲がないのであれば、集落活動に意欲ある移住者に引き継いでもらって、管理をお願いすることも考えてはと思います。最近では、移住者の自伐林家としての取り組みも目立ってきました。

一方で、所有者が売りたい山林は、境界が不確定な場合が多く、現地調査をして、新たに境界を決める必要がありますが、もし地籍調査が済んでいれば、大きく手間が省けます。

そこで高知県は全国的に見ても、地籍調査へは積極的な県とお聞きをしている所ですが、移住の取り組みが期待される集落の地籍調査に関しては、県が市町村にその実施を優先的に働きかける取り組みをして、集落活動に意欲ある移住者との売買がスムーズに進むよう働きかけるお考えはないか。土木部長にお聞きをいたします。

(1-4 香美市議会からの市街化調整区域内の規制緩和にについて)

次に、移住政策にマイナスを生み出している、高知県の都市計画についてお聞きいたします。

私の住んでいる香美市は、高知広域都市計画区域に位置付けられ、高知市・南国市・いの町とともに県内でただ一つの区域区分いわゆる「線引き」が行われています。

この線引きの考え方は、人を集める「市街化区域」と、人を入れない「市街化調整区域」に分けることで、コンパクトで効率的な市街地を形成すると同時に、農業に適した土地を維持するため、例えば既存農地のすぐそばに、他所から来た人が家を建てられないようにという規制を定めました。

香美市においては、昭和45年に線引きが行われています。その当時は、高度成長期で、人口増加により乱開発が進み、住民の満足が低下することを恐れたという時代背景は理解します。

しかし、44年経った今、人を集めるはずだった市街化区域は、空き家が目立ち、人を入れない「市街化調整区域」は、人が入らない一方で、次の世代が実家を離れるため、どんどん人口が減って行っています。

そんな中、昨年12月には、香美市議会が「移住促進を図るため、線引きの一部見直し並びに市街化調整区域の規制緩和を求める意見書」を、尾崎知事あてに提出しました。

今年5月の「香美市議会だより」に、県からの回答が印刷され、香美市民に届けられましたが、県の認めないという回答に対し、「今後は県知事に直接面会して直談判するしかないと考えます」という、強い文章で結ばれていました。

この文面からは、数十年にわたる県の許可行政へのいら立ちがこもっているように感じます。

私の方で少し解説するなら、市街化調整区域に建つ家が空き家となった場合、この空き家は、法律と条例によって賃貸できません。

では、買うのはどうかというと、既に財産として家を持っている方は買えません。市街化調整区域に2軒目の家を持つことは許されないのです。

香美市は高台にあることから、津波の被災から逃れたいという要望はたくさんありますし、移住希望者からも人気があります。しかし、法と高知県の条例が許しません。これは県の移住政策とも、南海地震対策とも矛盾します。

この香美市の意見書に関する趣旨については、県としても議論をスタートし、検討中であるとも聞いていますが、改めて土木部長にその見解をお伺いいたします。

(1-5 大学周辺地整備にかかる地区計画について)

次に、市街化調整区域における地区計画についてお聞きします。

高知県は昨年10月に、「市街化調整区域における地区計画の策定の指針について」の改正を出し、地区計画によって線引きに関する課題を解決することを示しました。

そして、香美市・南国市は、大学周辺の地区計画策定に関して議論をスタートさせています。

高知工科大学は平成9年に。高知大学医学部は昭和53年に、それぞれ市街化調整区域内にキャンパスが設置されたのですが、大学の有効活用、大学生の利便性について、今なお課題を抱えています。

例えば、南海地震対策として、県内企業で高台に移転したいという企業の移転面積は、合わせて17haとお聞きしていますが、県内の最善策として、工科大学に隣接し、企業集積を進めるために作られたテクノパークの面積を広げることができればと、私は考えます。

しかし香美市は、テクノパーク周辺の土地を、市街化調整区域という線引きに従って、農地として基盤整備を進めたことから、現状では、規模拡大は望めない状況です。

また他の企業ニーズのある土地はと考えても、やはり良い場所は全て市街化調整区域です。高知県の広域的な企業の高台移転を考えた時、非常に残念に感じます。

また、医学部周辺の開発は、医師確保の観点からも重要です。

医学部からは、医学部生が望む施設ができるように、規制緩和の要望が再三上がってきています。この飲食店やスーパーの立地が規制されていることは、将来に渡って優秀な医学部受験生から敬遠され、また大学卒業後も、高知大学は余りにも不便だから県外へという、研修医の流出を生み出し続けることにもなります。

そこで高知県は、香美市及び南国市から、大学周辺整備の前提となる地区計画や、高知県政にとって意義ある地区計画が示された際に、どのような考え方で対応するのか。土木部長にお伺いいたします。

(1-6 市街化調整区域にかかる用途変更の許可申請制度について)

次に、都市計画に関して、市街化調整区域に関する用途変更の許可申請制度についてお聞きします。

都市計画がスタートする昭和45年までに存在した住宅は、線引き前宅地ということで、売買ができるのですが、「所有者が変わります」という用途変更を、高知県に許可申請しなければなりません。この際に県は、合法的な建物であるかを厳密に審査します。

この際に、建築基準法の12条報告がよく問題になります。

この12条報告というのは、建物の所有者が、建築確認を取らずに、家の増改築をしていた場合に、その建物の適法性を高知県に報告するもので、設計士に、平面図・断面図・間取り図・配置図を作ってもらい提出します。ちなみに数万円から数十万円かかります。

これが都市計画区域でなければどうなるかと言えば、増改築時には県に届ける必要がないので、費用負担は発生しません。市街化調整区域に住んでいる人への、増改築時の大きな費用負担は、不公平感を生み出しています。

この点に関しては、例えば香美市においては、昭和45年10月31日以前に建てられて、増改築していない建物に関しては、所有者が変わる際の用途変更は、12条報告の必要がないので、このことを周知することで、線引き以前からその土地に住んでいる方の不公平感を緩和できるのではと考えるところです。

そこで高知県は、市街化調整区域の建物の用途変更に関して、県民からの相談があった場合。例えば、12条報告の必要性や、建物の合法判定。建築士などへの作図費用や合法な建物にするための改築費用などが考えられますが、手間暇かかる手続きに関して、どのように相談に応じているのか。土木部長にお聞き致します。

(1-7 2項道路に関するセットバックへの情報提供について)

最後に、2項道路に関するセットバックについてお聞きいたします。

私は、市街化調整区域内の古い建築物は、集落のシンボルともなり、有効活用すべきと考えています。

その際に、建築基準法の建物の敷地は幅員4メートル以上の道路に接さないといけないという基準と、増改築時に、道路の中心線から2メートル引いて建築しなければならないというルールが原因となって、活用が進まないのではと考えているところです。

例えば、所有する古民家をできれば売りたいと考えている方が、セットバックするための住宅改築費用を考え、工事しても売れなかったらと考え、中々踏み切れないという現状です。

しかし県に確認をしますと、都市計画区域に編入されて、建築基準法が適用される以前から存在した住宅は、増改築をしていないならセットバックする必要はないとのことです。

私は、集落の古民家を町作りの資源として有効活用すべきという点から、この点をもっと周知できないかと考えるところです。 そこで2項道路に接する建物の中で、売買時に建物のセットバックが必要がない住宅について、改めて県民の理解を深めるため、どのような場合にセットバックが必要になるかについて分かりやすく周知する必要があると考えるが、県としてどのように対応しようとしているのか。土木部長にお聞きをいたします。

(2-1 オランダを参考にした農家経営改善について)

次に、高知県の農業政策についてお聞きをいたします。

高知県は、オランダ・ウェストラント市と、友好園芸農業協定を締結し、世界一と言われるオランダ型農業をお手本に、次世代施設園芸拠点を整備するなど農業政策を積極的に推し進めています。

私も今年7月にウェストラント市を視察させて頂きましたが、ハウスの規模や生産技術の高さもさることながら、農業に対する考え方の違いについても非常に勉強させて頂きました。

「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」というようなことが言われますが、不確実な自然をできるだけコントロールするという発想が日本との差を生み出していると感じました。

オランダ人は、あらゆる事象を、全て数値に置き換えて、根拠を持って農業をやっています。

視察中に、オランダの多くの生産者から説明を受けましたが、私が何より驚いたのは、全ての数値を1平方mあたりで説明できるということでした。

例えば、トマトは1平方mあたり60kg収穫できます。その際の水の量は5リットルですというように。

ちなみに路地だと5kg、ビニールハウス導入で20kg。さらに暖房を入れて30kg。ガラスハウスにして55kg。さらに人口太陽をつけたら60kgという説明です。

現在の日本はどうかというと、単位は1反であり、平方mに直して1000平方mあたりで計算しています。オランダの方が1000倍きめ細かな農業をやっていると感じました。

そしてオランダの農業の真骨頂は、利益を出すということに対してシンプルということです。ナス農家で聞いた話をそのままお話しすると、1平方mあたり年間50kgのナスが取れます。売値は1kgあたり年平均85~90セントです。

ですから、1平方mあたりの売り上げは、掛け算をして、42.5~45ユーロ。経費は、温度管理が、工場の排熱利用で年間1ユーロ。水は雨水を使うのでほとんどタダ。その他の経費はこれこれです。

このように全ての農家が1平方mあたりの収穫量と経費。そして作物の1キロ当たり単価を把握して、そのバランスを考えながら農業経営をしています。

商売なので当たり前ではありますが、日本ではここまで徹底していないと感じます。

私は、高知県内の全ての農家が、オランダ式ハウス園芸に転換するというのは難しいと思いますが、すぐにできることとして改めて単位面積当たりの利益が最大になる、栽培方法の徹底からスタートすべきではないかと思う所です。

オランダと比べやすくするために、1反あたりと同時に1平方mあたりも併記して、物差しを共通化しておくということも必要ではと思います。

高知県では、須崎農業振興センターで、経営支援会議での定期的な協議や、生産データや簿記記帳データなどを活用した経営分析など、単位面積当たりの利益を最大化するための経営改善について、積極的な取り組みを行っていると聞いていますが、経営改善という点で、オランダを参考にして取り組んでいることがあるのか。またそうであるならどのようなものか。農業振興部長にお聞きをいたします。

(2-2 農業所得向上支援システムについて)

次に、農家の経営改善に関して、JAと一体となって推進している農業所得向上支援システムについてお聞きをいたします。

私は、高知県農業においてJAの役割は非常に大きいと考えておりまして、その中でも日々農家と接している営農指導員の役割は、益々高まってくると考えています。販売単価に合わせた作付面積や投入資材に関するアドバイスなど、利益を最大にするための経営サポートです。

オランダで印象的だった話があるのでご紹介します。それは「1平方mあたりの収量を伸ばすためには、こういった方法があります。しかし、コストが高すぎるために今はやりません」という話で、収量を増やす方法があっても、今より増える売り上げと、今より増えるコストを比べて、儲けが減るならやらないという経営判断です。

日本は、系統出荷という農協を通じた仕組みですから、市場の占有率も大事です。また、出荷数量は、委託販売手数料や肥料の売り上げなど、農協の経営にも影響します。

しかし、出荷数量を増やすための営農指導が行き過ぎて、農家の利益が減るようになっては本末転倒です。

先日、商工農林水産委員会で熊本県の視察を行いました。熊本県では、JAに委託する形で、「熊本県農家経営支援システム」という県内JA統一の経営診断のやり方を導入して成果を上げているとのことでした。

このシステムは、いわば農家ごとの通知表を作るもので、農家は、自分の足らない部分を明確にし、改善の努力をすることで、技術の向上、品質の底上げ。資材・燃料経費と労働力分析によるコスト削減。そして資金繰りの改善を実現しています。

また、作物ごとに農家のランキングが出るそうで、農家の経営改善のモチベーションアップにもつながっています。

そこで高知県も、昨年7月より、農業所得向上支援システムを導入して、農家の生産技術向上・経営数値の見える化、将来の経営計画について、JAと一体となって、農家を支援しているところですが、このシステム導入の状況と成果、今後の活用方針について、農業振興部長にお聞きをいたします。

(2-3 農家自身による土壌分析と施肥技術向上について)

次に、土壌分析についてお聞きをいたします。

農業は、虫と病気との闘いという側面がありますが、土耕栽培に比べて、養液栽培は病気による全滅があるため、リスクのある農業であると思います。オランダでは、水の浄化システムなど病気対策に結構な資金を投入しているように感じました。

一方でオランダ人の中には、日本人の土作りに対して、無駄なことをしているという意見もあることを知りました。私はこういった見方に対抗するため、土耕栽培において、アミノ酸系肥料や、病気を有用微生物でやっつけるというような研究を進めていくことで、オランダ人を驚かせるような収量アップ、品質向上を期待しています。

そしてそのためには、高度な土壌分析が不可欠です。

養液栽培に関しては、水に肥料を溶かし込んでいくということで、成分を分析する方法は確立していると思いますが、土耕栽培の場合は、晴天時と雨天時では土の状態は違いますし、養液栽培に比べて正確な分析は難しいのが現状です。

しかし、土壌分析がきちんと行われば、無駄な肥料を投入して経費を増大させる心配もなく、肥料の過剰投入による病気にも効果があると思われます。

高知県は、農業振興センターを中心に、環境に配慮した施肥技術体系の確立ということで、化学窒素肥料を減らす研究や、農家が自分で土壌分析する施肥診断技術の向上対策にも取り組んでいますが、この取り組みの可能性と成果について、農業振興部長にお聞きをいたします。

(2-4 農地集積に関する集落の話し合い支援について)

最後に、農家の収益向上のための農地集積についてお聞きをいたします。

今年度から農地中間管理機構が高知県でもスタートし、農地をリース方式で融通するという新たな方法に期待が集まっている所です。
一方で、借りたいというニーズ161.2haに対し、実際に貸してもよいという農地は3.9haと、マッチングが成立したとしても3%という非常に厳しいスタートとなっています。

私は、この結果に関して、耕作放棄地の中には、所有者が県外など離れた土地にいて、農地活用の意欲を失っていることが原因の一つであると考えておりまして、そうであるなら、農業を主たる仕事としていない人であっても、集落に住む人が耕作放棄地を一旦取得し、活用を考えることが、地域の農業を守ることにつながるのではと考えるところです。

先ほど、都市計画に関する質問の中で、移住者による空き家購入の話をさせて頂いたのですが、空き家の売主は農地もセットで売りたいという方も多くいらっしゃいます。

しかし農地法の第3条では、農地を取得できるのは農家もしくは新規就農者であって、例えば香美市であれば農地を取得する場合、農地を取得する方、又はその世帯員等の農地取得後の合計面積が4反を下回る場合は購入できません。

移住者がもし新たに就農することを希望しても、いきなり4反以上は広すぎると感じますし、離れた土地に住む農地の所有者は、農業の厳しい昨今の現状の中、農地活用への意欲は年々小さくなると考えられるので、一度チャンスを逃したら、次の売買が成立する可能性は、さらに難しくなります。

そこで例えば、移住者が新たに買おうとしている農地に、農地中間管理機構の利用権を設定するという前提であれば、住宅と農地を同時に購入できるということになれば、移住者の人口増によって集落を担う人材が増えると同時に、耕作放棄地も有効活用でき、農地集積も進めることができるのではと考えるところです。

現状は、法律の点から難しいのですが、耕作放棄地の所有者が集落にいるかどうかが、耕作放棄地対策に対して有効ではないかというのは、熊本県が集落での話し合いに力を入れているという事例がヒントになりました。

熊本県では、農地の集積に関して良い成果を上げているようで、集積面積の増加が2年連続400haを果たしたそうです。

熊本県では、集落ごとに農家だけでなくお年寄りや女性も参加したきめ細やかな話し合いが行われているそうで、地域の農地の活用について集落に住む人みんなで解決していこうという機運が盛り上がり、耕作放棄地を所有する方への働きかけも、うまくいっているのではと思います。

そこで高知県は、耕作放棄地を有効活用するための話し合い支援に関して、どのような対策を行っているのか。また不在地主に対して、農地活用の働きかけに関してどのように取り組んでいるのか。農業振興部長にお聞きをいたします。

(3-1 知の拠点永国寺キャンパスについて)

次に、来年度から稼働する知の拠点・永国寺キャンパスに設置される産学官民連携センターについてお聞きします。

私は、今回設置される産学官民連携センターは、高知県が直面する課題を解決するための最後の切り札と考えておりまして、非常に期待している所です。

その理由は、高知県の弱点の一つは、大学や県の公設機関など、研究分野の拠点が県内各地に散らばっていることではないかと考えておりまして、それぞれの知恵をもっと出し合えば、困難な課題解決の糸口が見いだせると考えているからです。

高知県は、既存の県内企業のものづくりに関する支援については、布師田にある産業振興センターに「ものづくり地産地消・外商センター」を設置しました。

私は、この方針について、現状では最善であろうと考えております。しかし、大学発の最新の英知を入れるということ。また工業技術センターなど、他の地域にある研究施設との連携等、これまで以上にしっかり作って頂くようお願いするところです。

さて、永国寺キャンパスでは、高知県民が苦手とする横の連携について、意識的に取り組み、地域貢献活動に関する情報交換、新たなビジネスプラン作りなど、永国寺キャンパスでしかできない、県内大学の連携。また商店街やNPOなどの地域組織、そして現役大学生はもちろん、社会人、リタイア世代など、多くの県民が集い知恵を出し合う工夫をして欲しいと考えるところです。

魅力のない所に、人は集まりません。大学は敷居が高いと言われてきましたが、知の拠点永国寺キャンパスには、自然と人が集まるような場所にしていって頂きたいと思います。

1つのアイディアとして、「地域活性化プラン・ブラッシュアップコンテスト」というものを提案します。このコンテストは、プランを発表する側ではなく、アドバイスする側に賞品を出そうというもので、プランの発表者が、一番良いアドバイスをした方に得点を与えます。

半年くらいを目途に集計して、一番良いアドバイスをした方を表彰します。この取り組みは、地域活性化に関するアイディアを深めるだけでなく、地域活性に関する協力者の発掘、人材の育成にもつながります。

これは一例ですが、このようなアイディアを出して、人が自然と集まるような仕組み作りを、是非作って頂きたいと考えるところです。

そこで、私は、永国寺キャンパスこそが、地方創生モデルの先頭を走るものであると考えていますが、産学官民連携センターについて、知事の意気込みを改めてお聞きします。

(3-2 よろず支援拠点へのサポートについて)

最後に、今年6月からスタートした「よろず支援拠点」についてお聞きします。

このよろず支援拠点は、国の「中小企業・小規模事業者対策」の目玉で、永国寺キャンパスで議論されていたように「地域の支援機関の連携」がキーワードとなっております。

今回のこのモデルは、コーディネーターの力量がカギで、国としては「販路拡大につながる経営相談によって、行列のできる拠点となる」ということを目指しています。

行列ができるとは、コーディネーターの相談が的確であれば、何度でも相談にやってくるということを表していて、よろず支援拠点の評価を、来場者の「のべ人数」で計るということのようです。

企業の支援組織の評価は相談件数や売り上げ、マッチング金額で計る方法もありますが、相談者にとって役に立ったかどうかを、足を運んだ回数として、質を重視して計るというのは新しいのではと思います。

また、コーディネーター1名、サブコーディネーター3名という組織で、県庁からの出向というような形ではなく、どこの組織からも中立な立場で相談に乗るということもこれまでなかった仕組みです。

さらに国は、各地の成果を分析して、コーディネーターの力量を見える化し、適切にフォローすることも考えているようです。

私は、このよろず支援拠点に対して、コーディネーターという役割を重視し、各機関から中立という個人の力量に期待した仕組みを非常に評価している所ですが、高知県として、この国の拠点とどのような相乗効果を生み出そうとしているのか。また役割分担について、商工労働部長にお聞きをしまして、私の第一問といたします。

○知事(尾﨑正直君)

依光議員の御質問にお答えをいたします。

まず、県外に人口が流出し、高知市に人口が集中している現状の中、都市と里山の共生についてどのように考えているのかとのお尋ねがございました。

県外への人口流出が進みますと、人口減少に伴う県内マーケットの縮小に加え、若い世代が県外に流出することにより、特に中山間地域では過疎化、高齢化の同時進行による孤立化が深刻になりますとともに、産業や地域の将来を担う人材が減少するなど、大変大きな影響が出るものだと考えております。

また、高知市に過度に人口集中することにより、本県の基幹産業である農業などが壊滅的な打撃を受け、さらには、それぞれの地域にある自然や伝統文化を守っていくこともできなくなるのではないかといった懸念があります。

こうしたことを考えますと、今後、地方創生に向けた対策の議論が本格化する中で、都市と里山、いわゆる中山間地域がいかに共生していくかが重要な課題になるものと考えております。

都会対田舎という対決の構図ではなく、いかに共生をさせるかという視点が重要だと、御指摘のとおり考えるところであります。

そのための具体的な施策として、例えば、中山間地域で高収益の施設園芸や6次産業化など複合経営による農業を進めることによって、都市部の方に安全・安心でおいしい農産物を供給する。一方、中山間地域は、それに伴って栄える。また、都市部においてCLTを活用した建築が進むことによって、林業が再生をし、中山間地域が都市部とともに栄えると。このように、都市部が栄えれば栄えるほど、中山間地域が農林業を通じて栄えていくといった構造をつくり、都市と里山、中山間地域の共生を実現していかなければならないのではないかと考えておるところでございます。

県としましては、こうした認識に立ちまして、全国知事会等とも連携をしながら、引き続き、さきに上げたような具体性を持って政策提言を行っていきますとともに、中山間総合対策本部を通じまして、全庁を挙げた施策を展開してまいりたいと考えているところでございます。


次に、産学官民連携センターへの意気込みについてお尋ねがございました。

地方創生が我が国の重要なテーマとなっている中、全国に先駆けて人口減少や高齢化が進む本県としましては、こうした課題を真正面から受けとめ、これまで産業振興計画の推進、大学改革など教育の充実、さらには中山間対策などに、地方創生の思いを持って全力で取り組んでまいりました。こうした取り組みを、さらに高いレベルを目指して推し進めてまいりますためには、大学などの高等教育機関の英知の活用や、産学官民の連携を促進していくことが極めて重要であると考えております。

このため、社会に貢献する知の拠点として整備する永国寺キャンパスに、産学官民連携センターを設置することとし、そのあり方について協議を重ねてまいりました。

現在は、来年4月からの開設に向け、基本構想を取りまとめているところでありますが、センターには知の拠点、交流の拠点、人材育成の拠点といった3つの拠点機能を備えることとしたいと考えております。

知の拠点機能としましては、高等教育機関の知見や学生の活力を生かし、県民の皆様の課題解決につなげる相談窓口を設置したいと考えております。日常的に高等教育機関や県の担当者が顔を合わせ、情報共有や議論を深めながら連携して課題解決につなげていきたいと考えているところです。

交流の拠点機能では、永国寺の地の利を生かし、人と情報が集まる交流スペースを設置いたします。大学や研究機関などがシーズや研究成果などを相互に紹介し、人を知り、活動内容を共有するといった交流機会を意図的につくり出すことで、大学や研究機関などの横の連携の強化につなげていきたいと思います。現在、この交流機会を意図的につくり出す取り組みの具体化を図ろうと考えておりまして、高等教育機関や経済界など、さまざまな方の御意見を伺いながら、起業家によるリレーセミナーでありますとか、高等教育機関のシーズの紹介でありますとか、産学官連携の成果報告会などの交流プログラムづくり、こちらに取り組んでいるところであります。また、センターのホームページで、5つの高等教育機関の産学官連携や学生の地域連携活動などの情報を一元的に発信するなど、県内の産学官民連携に関する情報発信も強化したいと考えているところです。

さらに、3点目の人材育成の拠点機能では、大学キャンパス内という学ぶ環境を生かした社会人教育などに取り組みたいと考えておりまして、産業人材の育成として平成24年度から産業振興計画の枠組みの中で実施しております土佐まるごとビジネスアカデミー、こちらもこのセンターで実施することとしたいと考えておりますとともに、高等教育機関が実施する社会人教育や人材育成の情報を一元的に発信し、社会人が学ぶ拠点としての機能を強化したいと考えているところであります。

このように、産学官民連携センターでは、地方創生の思いを持って、県勢浮揚につながる産学官民の力を結集する取り組みを行っていきたいと考えています。

センターのこのような取り組みが、実効性のあるものとなるためにも、産学官民連携の取り組みにインセンティブをもたらすような具体的な仕込みを行っていくことが大事だと考えております。このため、例えば、産学官民連携による取り組みで生まれたビジネスプランを、産業振興計画の枠組みの中で磨き上げ、事業化までつなげていくといったことを制度化することができないだろうかと、そういうことを今、考えているところであります。

議員の御提案のようなコンテストも、インセンティブを高めるアイデアの一つだと考えておりますので、大いに参考にさせていただきたいと考えているところでございます。

私からは以上でございます。

(教育長田村壮児君登壇)
○教育長(田村壮児君)
まちづくりに関連して、ヘリテージマネージャーの養成に取り組む意気込みについてお尋ねがございました。

歴史的文化遺産の保存や活用についてのノウハウを有する、いわゆるヘリテージマネージャーの養成は、阪神・淡路大震災をきっかけに、兵庫県で始まった取り組みであり、現在では全国27道府県に広がっております。また国としても、文化財の保存と地域活性化のために人材育成が重要であることから、文化遺産を活かした地域活性化事業を通じて財政的支援を行っているところです。

本県におきましても、国宝の大豊町豊楽寺薬師堂や重要文化財の香南市安岡家住宅を初め、歴史的建造物が数多くありますので、将来予測される南海トラフ地震から、こうした建造物を守るとともに、歴史的建造物を生かした地域振興や、古民家を活用した魅力あるまちづくりを通じ、移住促進へもつなげていくという観点からも、専門知識を有するヘリテージマネージャーの養成が重要だと考えております。

このため、本年度は、高知県建築士会の御協力をいただきながら、ヘリテージマネージャー養成講座開設に向けた準備会を先月開催したところ、約80名という多くの参加があり、非常に高い関心が寄せられております。

今後とも、高知県建築士会を初めとした関係者と連携を図りながら、来年度にはぜひともヘリテージマネージャー養成講座を新規開設して、より多くの方にヘリテージマネージャーになっていただくよう、取り組みを進めてまいります。


(土木部長奥谷正君登壇)
○土木部長(奥谷正君)
移住の取り組みが期待される集落の地籍調査についてお尋ねがありました。

地籍調査につきましては、東日本大震災の発生を契機に、南海トラフ地震に備えた防災対策や復旧・復興事業を円滑に進める観点から、事業のスピードアップが求められており、特に地籍調査が終了していない津波浸水予測区域を含む沿岸18市町村の住宅地を中心に、事業の推進を図ることとしています。

また、山林部につきましては、平成25年度末の進捗率では約53%と、宅地や農用地などと比較しますと調査が進んでいますが、土地所有者の高齢化や山林の荒廃の進行により、境界の確認が困難な状況になってきています。このため、国が行っている山村境界基本調査などを導入して、山林の境界情報の保全に努めています。

お話のありました移住の取り組みが期待される地域への対応につきましては、市町村ヒアリングなどの場において移住の取り組みを確認するとともに、事業採択の優先順位について配慮するなど、本県への移住促進の観点も踏まえた地籍調査事業の推進に努めてまいります。

次に、香美市の意見書への見解についてお尋ねがありました。

まず、線引きの一部見直しにつきましては、今後の人口減少・超高齢化社会におけるコンパクトなまちづくりを実現するため、線引きを縮小する方向で検討する必要もありますが、香美市の市街化区域内は、人口減少が緩やかであること、また縁辺部まで土地利用が適正に図られていることから、引き続き線引きの見直しの必要はないと考えております。なお、香美市においては、昭和45年から線引きを行うことにより、市役所やJR土佐山田駅を中心に街路や公園がバランスよく配置され、人口規模に見合ったコンパクトなまちづくりがなされていると、高く評価しております。

次に、市街化調整区域における空き家の賃貸については、県政の基本政策である移住の促進や、南海トラフ地震から県民の命を守ることを目的として、規制の緩和を検討しているところです。具体的には、県外からの移住者や津波浸水予測区域からの移転者を対象とし、耐震性などの要件を満たした空き家は、賃貸用住宅として用途変更を認めることを検討しています。また、津波浸水予測区域に居住している避難行動要支援者が津波浸水予測区域外へ転居する場合に限り、2軒目の住宅を新たに建築することを認めることも検討しております。

次に、香美市及び南国市から地区計画が示された際の対応についてお尋ねがありました。

地区計画は、それぞれの地区の特性に応じて、良好な都市環境の形成を図るために必要な事項を定める地区レベルの都市計画であり、今後の人口減少や高齢化に伴う市街化調整区域内の既存コミュニティーの維持や地域の活性化のためには、有効な手段だと考えております。このため、今後、香美市や南国市から地区計画の協議があった場合には、積極的に支援をしてまいります。

次に、市街化調整区域の建物の用途変更の手続に関し、どのように相談に応じているのかとのお尋ねがありました。

市街化調整区域の建物の用途変更を行うには、都市計画法により知事の許可が必要と定められています。これは、開発許可制度の目的である良質な宅地水準を確保するとともに、適正な土地利用を実現するため行うものです。

許可に当たりましては、省令等に定められた書類を提出していただき、建物や敷地の合法性の確認を行っています。建物につきましては、昭和45年の線引き後に増改築が行われた場合は、建築確認により合法性の確認を行っています。

敷地につきましては、道路や水路に接している場合は、その管理者との境界確定の資料により不法に占有されていないことの確認を行っています。

こうした必要な手続が行われている場合には、既存の資料等により合法性の確認を行うことができます。しかし、必要な手続が行われていない場合は、用途変更の許可までに、建築基準法第12条に基づく報告や官民境界の確定などの手続が必要となり、これに要する手間や費用が発生することになります。

このため、用途変更などの御相談に際しましては、都市計画法や建築基準法など関係法令の趣旨を説明し、御理解をいただいた上で必要な手続を行っていただいているところですが、今後、より一層丁寧な説明、対応をするよう心がけてまいります。また、宅地建物取引業者に対しましても、市街化調整区域内の建物の売買を仲介する際には、購入者がその取引に関する重要事項を理解し、十分な情報を得た上で判断できるような適切な説明を行うよう、関係団体等を通じ指導を行ってまいります。

次に、2項道路に接する建物はどのような場合にセットバックが必要になるのかを、わかりやすく周知する方法についてお尋ねがありました。

建築基準法の規定では、都市計画区域内においては、敷地が幅員4メートル以上の道路に接していなければ、建築物を建築することができないと定められています。他方、都市計画区域に編入された時点で、既に建築物が建ち並んでいた幅員4メートル未満の道路を2項道路といい、将来的に4メートルの幅員を確保するよう、道路の中心線から2メートル後退した線を道路境界線とみなしています。このため、2項道路に接して建築物を新築、増改築する際には、こうしてみなされた道路境界線まで建築物全体を後退させる必要があります。これがいわゆるセットバックであり、都市計画区域に編入される前から建っている建築物については、増改築をしない限りセットバックの必要はありません。

どのような場合にセットバックが必要かについては、設計に携わる建築士は十分理解していますが、専門的であることから、県民の皆様に正しく理解されていない場合もあると思われます。このため、建物や宅地の取引を仲介する業者が県民の皆様に正しい情報を伝えられるよう、業界団体を通じて周知してまいります。


(農業振興部長味元毅君登壇)
○農業振興部長(味元毅君)
農業政策に関しまして、まず、オランダを参考にした農家経営改善の取り組みと、農業所得向上支援システムの導入状況などについてのお尋ねがございました。関連いたしますので、あわせてお答えを申し上げます。

本県では、小規模な家族経営が大半を占め、家計と農業経営が分離されていないなど、オランダのような企業的な経営管理を行っている農業者は少ないのが現状でございます。

現在、農業振興センターでは、こうした方々を対象に、JAと連携し、個人の販売データや簿記記帳データを活用した年次分析や、優良な経営を行っている方と何が違うのかがわかる比較分析などを行い、農家の経営改善に向けた取り組みを支援しているところでございます。

しかしながら、これまでの取り組みは、個々の農業者の簿記記帳に基づく経営分析や診断であり、データの収集や分析などに多大な時間がかかりますため、支援できる農業者の数が限られることが課題となっておりました。

そこで、経営改善支援の効率化を図るため、昨年7月にはJA高知電算センターに、農業所得向上支援システムを含むJA総合新提案型システムが整備をされました。このシステムを活用すれば、簡単な操作で、短時間に決算書の作成や年次分析、優良経営との比較などの経営診断結果を、個人ごとにわかりやすい表やグラフとして示すことができますので、迅速かつ的確に、多くの農業者に経営改善の支援を行うことができます。

そのため、今後はJAと連携しまして、システム活用のメリットや活用方法を農業者に周知し、より多くの方々に参加していただくことで、経営面でもオランダに一歩でも近づけるよう、農業者の経営能力の向上に取り組んでまいります。

次に、化学肥料を減らす研究や土壌分析による施肥診断技術の向上対策についてのお尋ねがございました。

肥料の過剰施用は、コスト面でのデメリットが大きいだけでなく、作物の根傷みの要因ともなりますし、また環境への悪影響も懸念をされるところでございます。

このため県では、平成19年4月に策定した高知県環境保全型農業総合推進プランの取り組みとして、野菜28品目、果樹9品目、花卉10品目の施肥基準を策定するとともに、土壌診断に基づく適正な施肥を推進してまいりました。こうした取り組みにより、施設園芸農家のほとんどが、JA等への委託により作付前の土壌分析を実施しており、コストの削減や根傷みを主な要因とする土壌病害の防止効果が見られるなどの成果が出ております。

これまでの取り組みをさらに進め、収量や品質の向上につなげてまいりますためには、作付前だけではなく、作物の生育期間中の土壌の養分と水分をモニタリングし、その結果に基づき追肥の時期や量を判断することが必要ですが、これまでは農家段階で容易に測定できる機器がなかったことから、生育期間中の分析はほとんど行われておりませんでした。

しかし、最近では、土壌の養分や水分を長期間連続的に測定できる機器が市販をされております。この機器を導入することで、農家みずからが生育期間中の土壌の養分と水分の状態をリアルタイムで把握し、適正な施肥、かん水管理を行うことが可能になります。生産現場における実証展示を通じまして、これらの機器の活用方法や効果を明らかにすることで、普及に努めてまいります。

次に、農地集積に関する集落の話し合い支援や不在地主に対する農地活用の働きかけについてのお尋ねがございました。

担い手への農地集積を進めてまいりますためには、それぞれの地域での話し合いが大変重要だと考えております。そのため県では、平成24年度から各地域において、地域の農業を誰がどのように担うのか、耕作放棄地をどのように解消していくのかといったことを話し合う、人・農地プランの取り組みを推進しております。

具体的には、市町村が行う推進員の配置や、検討会の開催を支援するほか、高知市や宿毛市など県内5市町で重点地区を定めまして、直接、地域の話し合いに参画するなど、その取り組みを推進してまいりました。今後とも、これまでの取り組みに加え、市町村との間で県内外の優良事例の情報共有や推進方法の検討も行いながら、話し合いをさらに推進していきたいと考えております。

また、不在地主への農地活用の働きかけにつきましては、農地法の改正によりまして、これまでの農業委員会が農地の利用状況を調査し、耕作放棄地の所有者に対して指導をする仕組みから、指導にかわって意向調査を行うことで、農地中間管理機構への貸し付けを促す仕組みに改められました。県では、農地中間管理事業で農地の借り受け希望が多い地区をモデル地区として、この新たな仕組みに先行的に取り組むことといたしておりまして、その成果を県内に波及させたいと考えております。

今後も、農地中間管理機構の仕組みや国の有利な施策などを活用しながら、地域の話し合いを推進し、担い手への農地集積などの農地の有効活用を進めてまいります。


(商工労働部長原田悟君登壇)
○商工労働部長(原田悟君)
国の新しい中小企業対策であるよろず支援拠点と、県の事業との相乗効果や役割分担についてのお尋ねがございました。

よろず支援拠点は、中小企業者や小規模事業者のさまざまな課題や悩み事を広く受け付け、ワンストップでその相談に対応していく目的で、新たに各都道府県に設置されたものです。具体的には、資金繰りや販路開拓、経営改善などの相談内容に応じて、商工会議所、商工会などの地域の支援機関とも連携しながら、事業者が抱える経営課題の解決に向けたサポートを行っています。

本県にも6月に設置され、8月までの3カ月の間に、製造業を初め、小売・卸売業、農業、観光といった幅広い分野の相談を受け付けております。その相談件数は約350件に上り、リピーターも多いとお聞きしており、県内の小規模事業者のニーズに応えたものとなっていると認識しております。

一方で、県の中小企業事業者支援のかなめでありますものづくり地産地消・外商センターは、本県でのものづくりの流れを、より大きく、より早く、より確実にするため、ワンストップの相談窓口の設置や全国に通用するエキスパートを配置するなど、ものづくりのアイデア段階からプランの策定、試作開発、販路拡大までの一貫したサポートを行っています。この4月から8月までに1,300件を超える企業訪問を行っており、その訪問においては、商談への同行や営業戦略の協議といった具体的な支援を500件以上行うなど、ものづくり分野に特化した総合支援機関として機能しているところです。

このように、それぞれの役割を果たしている機関ではありますが、例えば、ものづくり企業が外商センターの支援を受けてビジネスプランを策定していく中で、資金繰りや税務などの経営課題が生じた場合には、よろず支援拠点のネットワークを活用し、金融機関や税理士事務所につなぐことで事業化への課題解決が進むといったことなど、両者の連携による相乗効果が生まれてくるものと考えております。

よろず支援拠点は、ものづくり地産地消・外商センターも入っております高知市布師田にありますぢばさんセンターに事務所がありますので、お互い連携しやすい環境にあります。本県の産業振興のための新たな支援機関として、産業振興計画の取り組みにも大いに貢献していただけるものと期待しております。


○9番(依光晃一郎君)
それぞれ前向きな御答弁ありがとうございました。質問ではなくて、要請をさせていただきます。

市街化調整区域に関しまして、土木部長から空き家の活用に関して前向きな御答弁をいただきました。賃貸住宅として、また2軒目の家に関しても大丈夫ということで、非常にうれしく思います。

この都市計画に関しては、やっぱり人を集める部分と集めない部分、市街化調整区域はやっぱり集めないという考え方のもとであるんだと思いますし、集落の中には本当に古い集落もあって、その人を集めないとしている集落にも、本当に大切な建物も含めあるんだと思いますんで、時代に合わせて、市街化調整区域の対応には今 後ともさらなる議論を進めていただきますよう、それを要請させていただきまして、私の一切の質問とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○議長(浜田英宏君) 以上をもって、本日の議事日程は終了いたしました。
明2日の議事日程は、議案に対する質疑並びに一般質問であります。開議時刻は午前10時、本日はこれにて散会いたします。
午後4時18分散会